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先生

耐えがたい暑さに、身の置きどころもない日が続いております。
健康には十分注意し夏バテなどされませんように、くれぐれもご自愛ください。

 

さて、前回は医療DX化の目玉政策である電子処方箋の導入について、様々な問題点があることを指摘しました。電子処方箋の運用にはマイナ保険証を使うことが必須ですが、今のところ利用率は30%程度と低く、普及は停滞しています。このままですと、紙処方箋との並行運用となり、より一層事務的な煩雑さが増加すると思われます。

電子処方箋の導入が厚労省のマイナ保険証推進に大きく依存していることはわかりましたが、今回は導入することで我々医療側にどのような負担が生じるのかについて、解説したいと思います。

 

まず第一に挙げられるのは、導入および維持にかかるコストです。初期費用として、電子カルテとの連携、レセプトソフト対応、マイナカードリーダー設置など数十万円~数百万円の導入コストが発生すると言われています。さらに、定期的なバージョンアップ、保守契約、セキュリティ対策費用など継続的なランニングコストもかかります。
このコストは医療機関の規模が小さいほど相対的に負担が重くなるため、特に小規模施設で導入が進まない大きな要因となっています。
実際マイナ保険証利用率が今のままですと、医療施設の半数以上は電子処方箋を使用する見込みがありません。将来的に多少インセンティブが追加される可能性もありますが、あまり使用しないシステムのために多額の投資を行うのか、疑問に思われる施設も多いでしょう。またスタッフや医師のオペレーションプロセスも増加し、より複雑になります。

 

さらに問題なのが、電子カルテ会社の対応です。電子化された処方箋は厚労省の中継サーバ(ゲートウェイ)を通じて各施設に伝達されます。電子カルテのメーカー(ベンダー)もこれに対応する仕様の変更を行う必要があるのですが、この改修には数億単位の費用が必要となるため、ベンダーの規模により対応が異なります。
例えば、富士通などの全科共通の大手ベンダーでは、すでに対応済みのところが多いですが、特異領域(例えば眼科カルテ)をカバーする中小ベンダーについては、資金面だけでなく人的リソースの問題もあり、対応が遅れているところが散見されます。これらの仕様変更にかかる費用は当然、電子カルテの値段や保守費用に跳ね返ってきます。

 

また最悪対応不可となった場合でも簡単に電子カルテを乗り換えることは難しく、このような状況は「ベンダーロックイン」と呼ばれています。
つまり、電子処方箋を導入しなくても、医療施設にとっては結局金銭的な負担が強いられることとなります。

 

電子処方箋の全国の導入率(2025年3月時点)は、病院が5.2%、医科診療所が12.1%、歯科診療所が2.2%、薬局が67.9%と医療施設側の導入が圧倒的に遅れています。インセンティブの不足、見えない将来のDX像、細る保険診療収入など様々な要因があります。
今後、導入を促すのであれば、ありきたりですが、インセンティブの追加、保険診療収入の増加が必要です。そして何より将来の保険診療のビジョンを示すことが、今行政に問われています。

 

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医療法人恭青会

理事長 生野 恭司
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