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先生

紫陽花の色づく季節となりましたが、お変わりございませんでしょうか。
梅雨の候、お健やかにお過ごしのことと存じます。

 

さて、医療現場においても日々新たな取り組みが進められておりますが、今回は「電子処方箋」について触れてみたいと思います。電子処方箋は、医療機関が発行した院外処方情報を電子的に管理・伝達する仕組みです。医師は電子カルテ上で処方し、電子署名を付与して、厚生労働省が運営する「電子処方箋管理サービス(通称EPMS)」に送信します。この処方情報は、患者が薬局に赴いた際、マイナンバーカードに紐づけて呼び出され、薬局側のシステム(レセコン・調剤ソフト)を通じて取得・照会されます。電子処方箋の導入により、処方箋の紛失防止、重複投薬の回避、服薬情報の一元管理といった医療の質の向上が期待される一方で、このシステムが歓迎されているとは言い難い面もあります。

 

なぜなら、この仕組みを円滑に稼働させるためにはいくつかの前提条件があり、最も重要なのがマイナンバーカードの利用だからです。電子処方箋の受け取りには原則としてマイナンバーカードが必要であり、薬局ではカードによって本人確認が行われます。

 

一方で、2025年時点におけるマイナンバーカードの医療利用率(いわゆる「マイナ保険証」の実使用率)は20〜30%程度にとどまっており、制度の根幹が十分に機能していない状況と言えるでしょう。マイナンバーカードを使わない場合の救済措置として、QRコード付きの「処方の写し」を印刷してもらい、それを薬局に持参する方法がありますが、これは従来の紙処方箋と何ら変わらない事態となります。マイナンバーカードの低利用率は制度の実効性を大きく損なうため、医療側も薬局側も大きく腰が引けた状態となっています。

 

利用率が伸び悩む原因のひとつに保険証廃止に伴う救済策である「利用証」の存在があります。本制度はマイナンバーカードを持たない人などに対し、保険資格の確認を可能にする代替手段として導入され、一定の混乱回避効果を持っています。
しかしその一方で、利用証の存在が「マイナンバーカードを取得しなくても医療を受けられる」という認識を広げ、利用率の伸び悩みにつながっている懸念もあります。
そして利用率が伸びなければ、電子処方箋の運用現場ではマイナンバーカード未所持者に対する「写しの発行」や「紙処方への切り替え」が継続的に必要となり、制度の統一的な運用が著しく困難になるでしょう。
利用証は混乱回避の一手ではあるものの、結果として電子処方箋制度の本格的な定着を遅らせる要因ともなり得るのです。

このように、電子処方箋の導入にはマイナ保険証の利用率向上が必須であり、これが叶わない限り導入側も積極的に乗り出す動機が乏しい状態です。

 

次回以降は、電子処方箋に関してさらに掘り下げ、どのような金銭的・業務的負担が予測されるのかについて、具体的に列挙していきたいと思います。

 

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医療法人恭青会

理事長 生野 恭司
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