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先生

寒の入りとともに、冬の寒さが本格化してまいりました。

お風邪など召されませんよう、ご自愛ください。 

 

さて、これまで、日本の製薬業における問題について、開発、承認、製造、販売など、それぞれのプロセスからみてきました。具体的には、バイオ医薬品の台頭、海外に比べて遅くて厳しい承認過程、貧しい治験システム、円安による原材料費の高騰と海外薬品の退潮、年々安くなる公定価格、そして厳しい製造承認など、様々な要因が挙げられます。これらの要因により、日本の製薬業は「作るほど赤字になる」「売れるほど薬価を下げられる」という状況に陥っています。
市場に逆行するこの流れは正常な競争原理を破壊し、業界のモチベーションを大きく下げました。悪化する保険財政などのやむを得ない事情があるとは言え、業界全体として長期的なビジョンが見えず、既存品で日銭を稼ぐ経営を強いられています。
これまでは長期的な問題を取り上げましたが、今回は今日明日に直面する問題について掘り下げましょう。

 

日本の製薬の原末は50-60%が輸入に頼っており、ジェネリックに関してはさらに海外依存度が高く、中国とインドが大部分を占めています。つまり、できるだけ安い原末を海外から仕入れて国内で加工し出荷しているのです。
では、何が問題なのでしょうか。ひとつめは安定供給です。両国ともにコストダウンには有効ですが、その一方でサプライチェーンは非常に脆弱です。地政学的リスクだけでなく、両国ともに人口が多いため、感染症の流行時には自国の利益を優先して輸出制限などを行う可能性があります。

 

例えば、2020年に新型コロナウイルスが流行した際に、インドは自国の医薬品輸出を制限しました。この影響で、先進国では特にアセトアミノフェンが不足し、パニックが生じました。この時はアメリカが強く要請したため、早々に制限は解除されましたが、仮にこれが日本単独の問題であった場合、どれだけ対応してくれるかわかったものではありません。
もちろん感染症だけでなく、紛争などでも供給は滞る可能性があります。その結果、日本で薬が極端に不足する事態も想像できます。

 

海外の製造業における監視や管理も難しい問題です。GMP(Good Manufacturing Practice)違反により、ある日突然出荷停止になるケースがあります。安さを求めながら一定の高いクオリティを常に求めるのは難しく、粗悪品による効果不足や、場合によっては薬害の可能性もあります。それだけではありません、円安が進行すれば原末も値上がりするので、製薬業界はさらにひっ迫する可能性があります。

 

このような事態を回避するには、薬価の引き上げや補助金による国内生産の強化、輸入先の分散化や国際協調の強化などが考えられます。しかし、これらは製造業の仕事ではなく、政治の仕事です。世界各国で需要が高まるジェネリック薬品の原末供給先は、既に先進国の間で取り合いです。
このように、業界の自助努力は限界を迎えつつあり、今後は日本の製薬をどうするかということが、さらに高いレベルで話し合われなければいけません。

 

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医療法人恭青会

理事長 生野 恭司
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