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先生

今年も残すところあとひと月となりました。
寒さが一段と厳しくなってまいりましたので、どうぞお体にお気をつけてお過ごしください。

 

さて、みなさんは2021年の小林化工事件を覚えていますか?水虫治療薬の後発品に睡眠薬が混入し、使用した患者の7割に健康被害が生じ、数名が死亡しました。同社では500製品のうち8割の製品に書類捏造など手順書違反が発見されましたが、こうした不正は少なくとも20年前から常態化していたようです。その後、同社は廃業し、大手企業に吸収されました。
この事件以降、多くの企業で同様の事例が判明しました。製造工程を勝手に変える、未認可薬品を使っている、成分が規定通りに入っていないなど、様々な違反がもはや常態化していました。


なぜこのような不祥事が蔓延するのでしょうか。もちろん経営陣の倫理観の欠如や社内コンプライアンスのチェック体制の不備など、要因を挙げればきりがありません。

しかし、私は度重なる薬価の引き下げこそが、最も大きな原因ではないかと考えています。

日本では、保険適用医薬品の薬価は公定価格として厚労省によって決定されます。毎年1兆円ずつ膨れる医療費を抑制するため、政府は薬価を抑えるのに躍起です。
その昔、薬価は2年に1度改定されていました。これにより1990年以降、薬価は2年ごとに全体で1~2%ずつ引き下げられてきました。しかしそれではペースが足りないということで、2021年から改定が毎年行われるようになり、倍のスピードで値段が引き下げられるようになったのです。


また、以前は単純に市場価格との乖離率を参考に決められていた薬価ですが、現在では複雑怪奇なルールが色々課せられるようになりました。すべて書けませんが、その中でも有名なのが「拡大再算定」です。これは、薬が売れすぎた場合、さらに値段を引き下げますよというルールです。製薬企業は売れるように良い薬を作る努力していますが、その薬が売れて利益が上がると、逆に薬価が下げられてしまうのですから、たまったものではありません。こういった様々なトラップ的な手段も製薬会社のモチベーションを削ぐ要因になっている気がします。

 

このほかにも、10月から始まった長期収載品への選定療養費徴収により、先発品の売り上げが激減した会社もあります。こうした様々なルールにより、従来の販売では採算が成り立たなくなってきた製薬会社の体力は徐々に削られてきています。そしてついに、その体力もそろそろ尽きようとしている状況です。このような状況では、新薬を開発したり、導入するモチベーションを持つ余裕はなく、これが結果的にドラッグロスやドラッグラグの遠因になってきています。

今回は、日本国内の薬価に焦点を当てて製薬会社の問題点を解説しました。次は、さらにマクロ的な視点から、製薬業界の立ち位置と問題点を解説したいと思います。

 

さて、メルマガも2024年最後の配信となりました。今年も1年間ご愛読いただき誠にありがとうございました。最後になりましたが、みなさまの2025年がよき年であるように心からお祈りしております。

 

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医療法人恭青会

理事長 生野 恭司
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